A.まずは不許可理由をきちんと聴取することから始めましょう。
どうも、新宿高田馬場の入管業務専門の行政書士辻です。
コチラの記事(https://visa4you.tokyo/index.php/faq/item/59-nyuukann-hagaki)に入管から来たハガキの意味を解説しましたが、では、実際に不許可の可能性が高かったり、また入管に行ったら不許可の通知を受けた場合は、どうすればよいのか解説いたします。
(この解説は、「永住申請」には直接的に適用は出来ません。)
まず、パターンとしては、特例期間中であるか無いかに分かれますので、確認してください。
特例期間というのは、在留期限ギリギリで更新や変更申請をすると、その結果が通知される時か、もしくは在留期限の2か月後まで、持っている在留資格の効力が続くという期間のことです。
0、特例期間中ではない、まだ在留期限が残っている時の不許可
基本的には、このときは、不許可通知だけを受け取ることになります。
ですから、今持っている在留期限までは適法に在留することが出来ます。
ただ、再申請するのであれば、在留期限までにする必要があります。
もし、在留期限までの時間が少ないのであれば、素早い対応が求められます。
再申請に向けての指針は、「2」を参照してください。
1、特例期間中の不許可
特例期間中の更新も変更も、不許可となった瞬間に、特例期間が終わります。
ですから、本来ならばその時点でオーバーステイとなり、その外国人を即刻収容せざるを得ません。
入管ではこのような事態を避けるために、特例期間中に不許可となった方に、ひとつの救済措置を勧めています。
それが、元の申請を出国準備のための「特定活動」(通常、出国準備ビザと呼ばれます)への変更申請に切り替えるということです。
元の申請は、自分の在留資格の在留期限更新や、在留資格自体の変更の申請だったわけです。
それを特別に、「特定活動(出国準備)」への変更申請に切り替えるというものです。
やることは簡単で、申請を切り替えるという申請書1枚にサインをして、変更手数料4000円を払うだけです。
これにより、通常は、特定活動(出国準備)30日が貰えます。
ただ、このときは中長期滞在者では無くなりますから、在留カードはありません。
この時点で住民ではなくなり、ある一定の期間を過ぎると、入管から知らせを受けた役所が職権で住民票から名前を消します。
問題は、この30日という絶妙な期間設定です。
というのも、30日間では、特定期間が存在しません。
(東京の入管では「31日」が付与される場合がありますが、これは非常に特別な場合です。)
つまり、もし、もう一度、何らかの在留資格の申請をしたとしても、特例期間が無いので、申請中だとしても30日後には必ず出国しなければなりません。
もちろん、入管側も再申請を受理したならば、特急で処理してくれますが、それでも時間は無限にあるわけではありません。
よって、不許可通知を受けて特定活動(出国準備)に変更された後に、速やかに、再申請をすべきです。
2、再申請に向かっての戦略と指針
再申請をどうすればよいのか?ということに関して、私なりの(割と専門家はそう考えます)指針を解説します。
まず、不許可通知を受ける時に、不許可理由を確定する必要があります。
在留資格の審査の中で変更と更新の申請は、大雑把に言うと、2つの審査要件があります。
その人のやってることが在留資格に当てはまるかどうかに関するもの(在留資格該当性)と、その人が今までどのように日本で在留してきたかに関するもの(狭義の相当性)です。
申請が不許可だったということは、つまり、①在留資格の活動の条件を満たすことが出来ないのか、それとも、②日本での在留状況が悪いのか、審査官に聞かなければならないのです。
①不許可理由が、在留資格を満たせなかったことだけの場合
不許可理由が在留資格該当性だけの問題であれば、それを満たさなかった理由を目の前にいる審査官に聞かなければなりません。
例えば、給料が低いとか、会社の経営が安定していないとか、仕事の内容が違うとか、様々なことが考えられます。
もし、資料不足が原因で審査官が何か勘違いをしていた、事実とは違う判断をされていたならば、再申請は簡単になります。
その誤解を解くような資料を追加してから、再申請を受ければいいからです。
一方で、不許可の理由の原因を取り除くことが難しい場合は、残念ながら再申請はできません。
会社の経営状況は過去のものを変えることは出来ませんし、仕事の内容に関しても業種によっては難しい場合があります。
この時は、もちろん、追加資料を追加して再申請を受けることが出来ますが、相当の準備や論理、それでも不許可かも知れない覚悟が必要です。
②不許可理由が、今までの在留状況が悪かっただけの場合
不許可理由が、狭義の相当性だけの問題であれば、残念ながら再申請の希望は殆どありません。
というのは、どのような資料を追加しても、過去の在留不良は回復できないからです。
例えば、在留期限のほとんどを日本で過ごさなかったという場合は、もう、どうしようもありません。
例えば、留学生のアルバイトのし過ぎ、週28時間を超えて働いてしまった場合も、かなり難しくなります。
このようなときは、過去を真摯に反省し、未来に向かって誓約することが必要です。
ただ、それは申請する前に既に分かっていたことなので、申請の時に対応できたはずのことなのです。
やるべきことをやっていなかったことの代償は、非常に大きいです。
よって、再申請の場面では、何をしても通用しない可能性が高く、その時は、帰国するしかありません。
ただ、朗報は、帰国したからと言って、終わりではないということです。
というのも、在留資格該当性を満たしてさえいれば、基本的には戻ってくることが出来るからです。
それは、在留資格認定証交付申請(認定申請)をすれば、良いからです。
認定申請を審査するときには、更新や変更の要件であった狭義の相当性が原則的に『無い』からです。
つまり、今までの日本での在留状況は、一旦リセットされた状態で、認定申請の審査が行われるということです。
もちろん、認定申請の時であっても、過去の在留不良の反省などを述べる必要はあるでしょう。
しかし、基本的には、在留資格に関係するものだけで、認定申請は判断されます。
認定申請が通れば、認定証が交付されます。
そして、この認定証を本国の日本大使館・領事館へ持って行けば、ビザ申請をして再入国することが出来ます。
ですから、この②の時は、出国準備の30日以内に更新や変更の再申請ではなく、最初からやり直して認定申請の準備をすればよいということになります。
認定申請の場合は、呼び出しのために受入機関(会社や学校など)や受入者(配偶者など)の協力が必要です。
受入機関がそれを手伝ってくださるというのであれば、認定申請の書類をきちんと準備して、提出しましょう。
これは本人が出国準備の30日間の中でも出来ることですから、認定申請を出してから、本国へ帰国して認定証交付を待つということが出来ます。
結論としては、入管の審査官に、詳しく理由を聞いてから、
在留資格そのものに関する理由ならば、それをリカバーして再申請をすればよいですし、
在留不良に関するものであれば、再申請よりは認定申請をする戦略に切り替えればよいということになります。
3、結論
以上、特例期間中かどうかによって、特定活動(出国準備)になるかどうかが違います。
また、その後の再申請まで残された時間も、それぞれ違います。
特例期間じゃない → 在留カードはそのまま+在留期限までに再申請
特例期間中 → 在留カードは消える+速やかに再申請
そして、再申請をして良いかどうかは、2で述べたような、不許可理由がどこにあるのか、リカバーできるのかどうかで決定します。
これには、詳細な理由を、入管の審査官から聞く能力が無ければ、出来ません。
在留資格を満たせなった → リカバーできそうなら、資料を準備して再申請できる
在留不良であった → 基本的にリカバーできないので、認定申請へ切り替え
入管が許可の判断をするときは、それほど緊張感をもってやりません(私の印象では)。
許可の判断をしても、誰も入管を訴える人はいないからです。
しかし、不許可の判断をすると、それに不服を持った人は訴訟を起こすことが出来ます。
ですから、訴えられたことも想定して、きちんとした法令に基づいた理由がなければ、不許可としません。
ということは、一度、不許可の判断がついてしまうと、入管が考えた訴訟でも勝てるだろう理由をひっくり返さないと再申請しても無駄だということになります。
ですから、何よりも大切なのは、この入管の考えた不許可の理由を、きちんと把握することです。
そしてそれは、不許可通知書などでは詳細は知ることが出来ず、審査官からの聴取でしか分かりません。
再申請に向けた準備は、不許可通知の瞬間から始まっていると思うべきです。
第一に、最初に申請するときに、きちんとした資料(何が必要かは入管のホームページに)を準備すべきです。
よく、入管にパスポートと在留カードだけ持って、入管の中で写真を撮って、申請書を書いて、資料ゼロで申請している方を見かけます。
これは、非常に危険です。
第二に、不許可となってしまったら、不許可理由を詳しく聴取することが絶対条件です。
そこから、再申請に向けたスタートラインに立つことが出来るからです。
当事務所も不許可の可能性が高いハガキが来た方の相談から、不許可理由聴取の同行の相談や、再申請に向けた戦略の相談や、実際の再申請に至るまで様々なサービスを展開しています。
不許可の場合でも、あきらめず、ご相談いただければと思います。
ただし、再申請は、一度不許可理由が定まってしまっているために、それをひっくり返すための手間がかかります。
その追加の手間の分だけ、通常の申請より報酬が高くなりがちです。
最初から、きちんと準備をして、専門家にも相談してから、申請をすることを心がけてくださるのが一番です。