A.在留資格(ビザ)に関する様々な落とし穴がありますので、注意してください。
皆さんこんにちは、新宿は高田馬場の入管業務専門行政書士の辻です。
最近は働き方改革の影響で、副業と言うキーワードが目立つようになりました。
さらにコロナ禍は、それに拍車をかけているようです。
日本人が副業をするときも結構チェックすべきことは多いのですが、外国籍の方(外国人)は尚更です。
ここでは、どこに注意を払えばよいのかを書きます。
1、まず会社に副業が認められていなければなりません。
そもそも、本業の方が副業を禁止している場合があります。
2019年の記事ですが、副業を認めている会社は25%だそうです。
2021年となっても、副業を認めている会社は、それほど増えていないと考えられます。
まずは、会社に就業規則があるならそこに副業の規定があるかチェックし、無いならそもそも副業が出来ません。
厚生労働省のモデル就業規則には、『許可なくほかの会社等の業務に従事しないこと』という記載があって、副業が認められても会社の許可制である場合もあります。
なお、本業が雇用契約ではなく業務委託契約である場合は、就業規則のようなものはなく、自由に副業が出来ます。
もちろん、この場合、定義上は、副業ではなく、「複業」というべきものです。
ただし、業務委託契約であるかどうかは、契約書の名前では判断がつきません。
実に、雇用契約と書いてあるけれども、実体は業務委託契約であるというケースも多く見られます。
もし、タイムカードを押さない、厚生年金が無い、有給休暇が無い、毎年自分で確定申告しているなどの状況があるなら、業務委託契約である可能性が高いです。
2、副業が、今持っている在留資格と同じ在留資格かどうか?
次に考えるべきは、『副業としてやろうとしている業務が、今持っている在留資格に入っているかどうか』ということです。
同じならば、何も考えずに副業を始めても問題はありません。
違うならば、そのままでは副業を始めることが出来ません。
この時は、資格外活動許可の個別許可を取得すべきとなります。
在留資格は、基本的には「どのような業務をするか」によって決まっています。
例えば、SEやプログラマの方は、どこでその業務をやっても「技術・人文知識・国際業務」に該当します。
ですから、A社でプログラマとしてシステム開発している方が、B社でシステムの保守をしても問題はありません。
ただし、同じ業務でも場所によって在留資格が変化するものがあります。
典型的なのは、教師です。
教師は、私企業で教えるなら「技術・人文知識・国際業務」、法上の学校で教えるなら「教育」、大学で教えるなら「教授」です。
例えば、在留資格「技術・人文知識・国際業務」を持っている方が、大学の非常勤講師などをする場合は、「教授」に該当しますので、資格外活動許可が必要です。
在留資格の分類は非常に複雑で分かりにくいので、その副業が自分の持っている在留資格に入っているかどうかは、入管法に詳しい専門家に聞いた方が良いでしょう。
ちなみに、いわゆる身分系と呼ばれる4つの在留資格(永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者)は、就労制限がありませんので、どのような副業をしても大丈夫です。
3、資格外活動の個別許可って何?
次に、自分の持っている在留資格に副業の職務が入っていなかったときは、資格外活動許可の個別許可を受ける必要があります。
資格外活動許可と言うと、留学生の週28時間のアルバイトを思い浮かべると思いますが、あれは包括許可と呼ばれるもので、全くの別物です。
当事務所のホームページでも一度解説しました。
(https://visa4you.tokyo/index.php/blog/item/86-uver-1)
個別許可の時は、資格外活動許可の一般原則を全て満たす必要があります。
この中に一般原則の3として、
『申請に係る活動が法別表第1の1の表又は2の表の在留資格の下欄に掲げる活動に該当すること』
という原則があります。
簡単に言うと、専門的な職務以外では、資格外活動許可は得られないということです。
ここには、「特定技能」と「技能実習」は含まれていませんから、いわゆるブルーカラーの非専門的な現業的(単純作業的)な職業は出来ません。
ですから、たとえ会社が副業を認めていても、外国籍の方は配達だけがその職務であるウーバーイーツの配達員は出来ないのです。
アルバイト雑誌で見る、『誰でもできます』という職務は、出来ません。
4、ボランティアは問題はありません。
報酬を受けないボランティア活動に関しては、資格外活動許可の規制を受けません。
しかし、この場合でも、本業をほとんどせずに、ボランティア活動だけをやっている場合は、在留不良として本業の在留資格の更新に影響を与える可能性があります。
5、臨時の報酬は大丈夫です。
たとえ、報酬を受けたとしても、それが「業として行うものではない講演に対する謝金、日常生活に伴う臨時の報酬その他の法務省令で定めるもの」の場合は、資格外活動許可の規制を受けません。
これに関しては、入管法施行規則の第19条の3に詳しく書かれています。
第十九条の三 法第十九条第一項第一号に規定する業として行うものではない講演に対する謝金、日常生活に伴う臨時の報酬その他の報酬は、次の各号に定めるとおりとする。
例えば、一回だけ友人が主催する講演会に呼ばれて、3万円の謝礼をもらったというのは問題ありません。
もちろん、この場合でも、何度も何度もやってしまうと、「業」に含まれてしまうので、あくまで、繰り返さない、臨時の報酬である必要があります。
6、まとめ
a)会社に確認しよう
そもそも、副業ができるのか、会社に確認しましょう。
b)資格外活動許可が必要か確認しよう
現在持っている在留資格と、副業の在留資格が同じかどうか確認しましょう。
c)働きすぎにも注意しよう
特に、資格外活動許可をもらって副業している場合、本業よりも副業の方への従事する時間が長くなると本末転倒です。
資格外活動は、現在持っている在留資格の活動を邪魔しない程度でしか行えませんので、副業をやりすぎると罰則を受け、最悪では退去強制されます。
d)確定申告しよう
確定申告義務がある場合は、確定申告しなければなりません。
税務署のホームページで確認しましょう。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki2017/a/01/1_06.htm
基本的には、副業の所得が20万を超えると確定申告の義務が生じます。
日本人が副業する場合でも、いろいろと確認事項が多いのですが、外国籍の方(外国人)の場合はなおさら複雑な在留資格制度を理解しなければなりません。
資格外活動罪とならないためにも、副業を考えていらっしゃる方は、ぜひ、一度お問い合わせいただければと思います。お問い合わせはコチラをクリック。