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会社の経営者は大変ですよ(不法就労助長罪と退去強制の話) Jun 08, 2021

会社の経営者は大変ですよ(不法就労助長罪と退去強制の話)

入管法上の不法就労というのは、かなり簡単に認められる可能性が高いものです。

その辺の事情を、入管法を使って説明しながら、不法就労助長罪や退去強制事由に関してみて行きたいと思います。

(この記事のスタート地点は、弁護士である山脇康嗣先生がSNS上で共有してくださった裁判例とその考察に基づいて、私なりに詳解したものです。)

0、不法就労活動ってなに?

入管法で定義されている不法就労活動とは何でしょうか?

それは、入管法第24条1項3の4号イに定義されています。

事業活動に関し、外国人に不法就労活動(第十九条第一項の規定に違反する活動又は第七十条第一項第一号、第二号、第三号から第三号の三まで、第五号、第七号から第七号の三まで若しくは第八号の二から第八号の四までに掲げる者が行う活動であつて報酬その他の収入を伴うものをいう。以下同じ。)をさせること。

なんだか、めちゃくちゃ長くて分かりにくいですが、()の中身がその定義です。

まずは、第19条第1項を引っ張ってみます。

・入管法、第19条第1項
別表第一の上欄の在留資格をもつて在留する者は、次項の許可を受けて行う場合を除き、次の各号に掲げる区分に応じ当該各号に掲げる活動を行つてはならない。
一 別表第一の一の表、二の表及び五の表の上欄の在留資格をもつて在留する者 当該在留資格に応じこれらの表の下欄に掲げる活動に属しない収入を伴う事業を運営する活動又は報酬(業として行うものではない講演に対する謝金、日常生活に伴う臨時の報酬その他の法務省令で定めるものを除く。以下同じ。)を受ける活動
二 別表第一の三の表及び四の表の上欄の在留資格をもつて在留する者 収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動

とても読みにくいですが、就労が可能となる在留資格においては、その在留資格に属していないものが該当します(1号)。
例えば、在留資格「技術・人文知識・国際業務」を持っている方が、食堂で調理人として働いていれば、違反となります。

また、就労が出来ない在留資格においては、就労をした時点で該当します(2号)
ここで、留学などの場合で資格外活動許可を得ているなら、その範囲内では違法となりません(これも注意点だらけですが…詳しくはこちらをクリック)。


では次に、第70条第1項を引っ張ってみます。この中で1~3の3まで、5、7~7の3、8の2~8の4が該当しますので、そこだけ書きます。

・第70条第1項の抜粋
次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは禁錮若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はその懲役若しくは禁錮及び罰金を併科する。
一 第三条の規定に違反して本邦に入つた者
二 入国審査官から上陸の許可等を受けないで本邦に上陸した者
二の二 偽りその他不正の手段により、上陸の許可等を受けて本邦に上陸し、又は第四章第二節の規定による許可を受けた者
三 第二十二条の四第一項(第一号又は第二号に係るものに限る。)の規定により在留資格を取り消された者で本邦に残留するもの
三の二 第二十二条の四第一項(第五号に係るものに限る。)の規定により在留資格を取り消された者(同条第七項本文の規定により期間の指定を受けた者を除く。)で本邦に残留するもの
三の三 第二十二条の四第七項本文(第六十一条の二の八第二項において準用する場合を含む。)の規定により期間の指定を受けた者で、当該期間を経過して本邦に残留するもの
四 (略)
五 在留期間の更新又は変更を受けないで在留期間(第二十条第六項(第二十一条第四項において準用する場合を含む。)の規定により本邦に在留することができる期間を含む。)を経過して本邦に残留する者
六 (略)
七 寄港地上陸の許可、船舶観光上陸の許可、通過上陸の許可、乗員上陸の許可、緊急上陸の許可、遭難による上陸の許可又は一時庇ひ護のための上陸の許可を受けた者で、旅券又は当該許可書に記載された期間を経過して本邦に残留するもの
七の二 第十四条の二第九項の規定により期間の指定を受けた者で当該期間内に出国しないもの
七の三 第十六条第九項の規定により期間の指定を受けた者で当該期間内に帰船し又は出国しないもの
八 (略)
八の二 第五十五条の三第一項の規定により出国命令を受けた者で、当該出国命令に係る出国期限を経過して本邦に残留するもの
八の三 第五十五条の六の規定により出国命令を取り消された者で本邦に残留するもの
八の四 第六十一条の二の四第一項の許可を受けた者で、仮滞在期間を経過して本邦に残留するもの
九 (略)

これらは収入を得る活動をしてはならない人たちです。
分類すると、不法上陸者の系統(1~2の2)、在留資格取消者の系統(3~3の3)オーバーステイの系統(5~7の3)、出国命令を受けた人の系統(8の2~8の4)に分かれます。
まとめてみれば、いわゆる「不法に滞在しているもの」と言えるでしょう。

持っている在留資格じゃない活動だったり、不法に滞在しているものがする収入を得るための活動が、不法就労活動だということです。


さて、ここに、落とし穴があります。
持っている在留資格とは別の活動をするのが不法就労活動だというのは分かりやすいのですが、もっと分かりにくい不法就労活動があります。

上に引用した入管法19条第1項にある『当該在留資格に応じこれらの表の下欄に掲げる活動に属(しない)』という言葉は、法律用語では在留資格該当性という言葉と同じです。

日本に在留している全ての外国籍の方は、在留資格に該当している活動だけを行わなければなりません。

ここで問題になるのは、この在留資格該当性はどのような場合に失われるのか?ということです。

入管法の趣旨から言うと、その活動の適法性が失われると、在留資格該当性も失われることが分かります。

在留資格「特定技能」や「技能実習」は、入管法や技能実習法の中に、労働関連法を遵守していることが、在留資格該当性の要件だと直接的に明記されています。
他の在留資格においては、入管の出している『在留資格の変更・在留期間の更新許可のガイドライン』の中に「6 雇用・労働条件が適正であること」と書かれており、間接的に在留資格の変更や在留期間の更新に影響を与えています。 

直接、間接の違いがありますが、原理的には、労働関連法違反をしている活動は、在留資格該当性を失っていると考える方が自然です。


よって、働いている会社などが労働関連法違反をしている場合、そこで働く外国籍の方の在留資格該当性は失われて、それは不法就労活動であると評価を受けてしまいます。

つまり、労働関連法違反をすれば、それは入管法上の不法就労活動だということです。

2019年の東京労働局の行った調査の結果によれば、調査した事業所の70%以上が労働基準関係法違反をしているそうです。(ニュースへのリンク

労働基準関連法違反は、残念ながら容易に違反してしまっているような状況です。
そこでもし外国籍の方が働いているとすれば、その方の活動は不法就労活動であると評価を受ける可能性が高いということです。
(特定技能と技能実習は、100%不法就労活動です)

以上をまとめると、不法就労活動とは、本来持っている在留資格ではない活動であったり、不法に滞在してる人がする収入を得る活動であったり、適法性(代表的に労働関連法の遵守)を失っている就労活動だということになります。

1、不法就労助長罪となんですか?

不法就労助長罪という言葉は入管法にはありませんが、よく通称で使われます。

条文では入管法第73条の2に記載されています。

次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた者
二 外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置いた者
三 業として、外国人に不法就労活動をさせる行為又は前号の行為に関しあつせんした者
2 前項各号に該当する行為をした者は、次の各号のいずれかに該当することを知らないことを理由として、同項の規定による処罰を免れることができない。ただし、過失のないときは、この限りでない。
一 当該外国人の活動が当該外国人の在留資格に応じた活動に属しない収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動であること。
二 当該外国人が当該外国人の活動を行うに当たり第十九条第二項の許可を受けていないこと。
三 当該外国人が第七十条第一項第一号、第二号、第三号から第三号の三まで、第五号、第七号から第七号の三まで又は第八号の二から第八号の四までに掲げる者であること。

何より、これは懲役まで規定された重たい罰則だと知っておかなくてはなりません。
1項の1~3号は、不法就労活動をさせたものが、この罰則に該当することを言っています。

重要なのは「2項」の柱書です。

「前項各号に該当する行為をした者は、次の各号のいずれかに該当することを知らないことを理由として、同項の規定による処罰を免れることができない。ただし、過失のないときは、この限りでない。」

雇っている外国籍の方がやっている活動が、不法就労活動であることを知らなかったと言っても、この罰則は免れることが出来ないことを言っています。
非常に重要なのは、最後の文章です。

『ただし、過失のないときは、この限りでない。』

過失というのは、不注意でしてしまう過ちというような意味ですが、入管法の裁判では非常に厳しく判断されます。

知らなかったことに過失がないと言えるためには、在留カード原本の確認、在留カード認識アプリでの確認、住民票での確認が必要だとされています。

また、名古屋地裁令和2年10月14日判決の裁判例によれば、

『採用当時は正規在留者であると信じていたことを前提…(中略)…不法滞在の疑いを持ちながら就労させることは、不法就労助長罪の規範に直面しながらこれを乗り越えている点で、故意犯として非難されるべきことが明らかである。…(中略)…採用後であっても、不法滞在の疑いが生じた場合は、在留カードの原本を提示させて、その記載内容、ホログラムや印刷状態等を確認し、関係官署に相談するなどして、正規在留者であることが確認出来れば雇用を継続し、確認出来ず不法滞在の疑いが残る以上は雇用継続しなければすむ話であり、雇用主が格別困難な対応を強いられるものでもない。』

不法滞在の疑いが生じても何もしないことが、知らないことに過失がないとは言えないと厳しく判示しています。

このようなことから、相当な覚悟をもって、不法就労活動をさせないという意識が非常に重要であることが分かります。
未だに労働関連法違反だけで、不法就労助長罪に問われたケースはありませんが、だからといって安心は出来ません。

経営者や派遣業者の方々は、外国籍の方を雇用したり派遣したりする場合、入念なチェックと、弁護士や社労士などの専門家への相談が必要だということです。

2、外国籍の経営者の方には更に厳しいです

不法就労助長罪に関しては、知らないことに対する過失がないのであれば、問われないものでした。

取るべき対策を全て取って慎重にやっていれば、不法就労助長罪には該当しないわけです。
(前述の通り、過失がないことの証明は、非常に難しくハードルは高いですが…)

ここで、もう1つ落とし穴は、不法就労活動をさせたという言葉の定義がどこにあったかということです。

「0、そもそも、不法就労活動ってなに?」で、不法就労活動の定義の条文として入管法第24条を引っ張りました。

実は、この条文は、退去強制事由の説明に出てくるのです。

もう一度、入管法第24条1項柱書きと3の4号の全体を引用します。

次の各号のいずれかに該当する外国人については、次章に規定する手続により、本邦からの退去を強制することができる。
三の四 次のイからハまでに掲げるいずれかの行為を行い、唆し、又はこれを助けた者
イ 事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせること。
ロ 外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置くこと。
ハ 業として、外国人に不法就労活動をさせる行為又はロに規定する行為に関しあつせんすること。

つまり、不法就労活動をさせた外国人経営者は、退去強制事由に該当してしまうということです。

ここで注目したいのは、この第24条には、不法就労助長罪にあった「知らなかったことの過失がないならOK」という言葉すら書かれてないことです。

裁判でもこの点が指摘されています。
東京地裁令和2年2月21日判決の判例によれば、

「このような入管法の規定に照らせば、同法24条3号の4イにいう「事業活動に関し、外国人に不法就労活動……をさせること」も、客観的に外国人に不法就労活動をさせるという客観的事実と、その客観的事実に対応する認識があれば足り、当該外国人の活動が資格外活動であることの認識を要するものではないと解するのが相当である」

不法就労活動の客観的事実があれば、退去強制自由に該当することが出来るということです。

経営者がそれを知っていた、知らなかったということに全く依存していません。
客観的に不法就労活動の事実があるだけで、良いのです。

退去強制は、永住者でも例外ではありません。

これを免れることが出来る外国籍の方は、特別永住者のみです。
(特別永住者は、入管法の特例法があり、退去強制の特例が特例法の第22条に定められていて、不法就労活動をさせたものは該当しません。)
(ちなみに、不法就労助長罪に問われて最高刑3年の懲役を受けても、退去強制事由にはなりません。)

永住者の方の中で、会社経営者の方というのは、結構多くいらっしゃると思いますが、永住者であっても退去強制事由に該当すれば日本から追い出されていまいます

しかも、注意を払っても払っても払いつくしても関係なく、会社の中で不法就労の客観的事実があれば、それだけで非常に簡単に、そして冷徹に退去強制され得るのが怖いところです。

現状は、前述している労働関連法違反での不法就労活動が認定された事件というのはありません。
しかし、法の趣旨からすると、経営している会社で労働関連法違反があり、外国籍の方が働いているならば、それは不法就労活動であり、退去強制事由に該当する可能性が常にあると考える必要があります。

自分が知らないうちに退去強制されてしまわないように、在留資格外での活動をさせない、不法滞在者を働かせない、労働関連法を遵守することに、気を配り、適当な専門家(弁護士、社労士、行政書士等)に普段から相談することが大切です。

3、まとめ

入管法の中から第24条1項3の4号、第19条第1項、第70条第1項、第73条の2を見ながら、不法就労活動、不法就労助長罪、退去強制事由まで見てきました。

さらに、不法就労助長罪の「知らないことの過失」は、とても簡単に認められること、退去強制事由においては客観的事実だけで事足りることも見てきました。

知らなかった!と言っても、ほとんどの場合は過失が認められ不法就労助長罪を受けます。
知らなくても、全く関係なく、退去強制させられます。

このようなリスクを管理することが経営者には求められているということです。

日本人・特別永住者の経営者に関しては、不法就労助長罪を避けるべく、また、その他の外国籍の方の経営者に関しては、退去強制を避けるべく、
不法就労活動を排除するための意識、特に、入管法の知識(+技能実習法の知識)だけではなく、労働関連法の知識も得て、高いコンプライアンスをもって会社の経営をして頂ければ幸いです。

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