A.たくさんありますが、まずはどのような仕事についてもらうかを考えましょう。
皆さんこんにちは、新宿は高田馬場のビザ業務専門の行政書士 辻です。
今回は、転職ではなく、日本で仕事をしていない外国人を正規に雇用するときの注意点について述べたいと思います。
0、どのような仕事をしてもらうか?
まず、外国人を雇用する前に、どのような仕事をしてもらうかを、きちんと定めなければなりません。
通常の日本における雇用体系は、属人的な雇用の仕方をします。
つまり、人柄や能力が良さそうな人を見つけて、雇用させてからいろいろな仕事をさせるというものです。
しかし、入管法の考え方は全く異なります。
これを頭に入れて採用を決めないと、すべてが水の泡となりかねません。
入管法において重要なのは、ジョブ型雇用の考え方です。
つまり、どの仕事をしてもらうかによって、ビザ(在留資格)が異なってきてしまうのです。
ビザ(在留資格)ごとに、外国人本人に求められる要件や、貴社に求められる要件が違ってきます。
ですから、雇用しようとする外国人にどのような仕事を任せようとしているのかを、きちんと決めてから採用に向けた行動をとった方が良いのです。
技能実習や特定技能は非常に厳しく、この業務が定められており、同じ職場であったとしても、違う業務が出来ません。
これを知らずして、入管法違反に問われて逮捕されたケースもありました。
もちろん、通常の就労ビザである「技術・人文知識・国際業務」は、業務の範囲が非常に広くできています。
ほとんどのホワイトカラーの職務をすることが出来ますが、それでも、業務を絞って考えることは、ビザ(在留資格)の申請にとって大切なことであることに変わりはありません。
もし、ブルーカラーの仕事をしてもらいたいと考えられている場合は、必ずビザの専門家に相談してください。
というのも、ブルーカラーの仕事に該当するのは「技能」や「技能実習」や「特定技能」ですが、これらは非常に複雑な要件が課されているからです。
何よりも、まず、貴社での仕事内容を、募集前の段階から詰めることをお勧めいたします。
1、外国人が日本にいる場合
日本に既にいるということは、ビザ(在留資格)をもって日本に在留しているということです。
ということは、即日雇い入れて、働いてもらえる状態だと思ってしまいがちです。
しかし、その外国人がどのビザ(在留資格)で在留しているかによって、全く違う注意点があります。
①在留資格「留学」のとき
いわゆる留学生を雇用するということは、よくあることです。
(ここでは、職歴を持たない若い留学生の話を中心としてします)
まず、その外国人が大卒かどうか?、これが第一のチェックポイントです。
もし、故郷の本国で大学を卒業しているならば、その卒業学部に従って、貴社でのホワイトカラーの業務につかせることが可能です。
学部に従ってとは、例えば、文学部を出ている外国人に、マーケティングや営業をしてもらうことは出来ます。
しかし、文学部卒の外国人は、プログラマーとしての職務はできないということです。
もちろん、学部だけでは判断がつきませんので、成績表を見て、どのような授業を取っていたのかをチェックすれば完璧です。
このあたり、複雑だなと思われたなら、専門家に任せた方が、楽です。
外国人が、日本の大学を卒業予定であるならば、話はもうすこし簡単になります。
この場合は、卒業学部と貴社での業務の関連性が薄かったとしても、割と緩くビザ(在留資格)が審査されます。
この辺りは日本の大学卒業者のメリットです。
もし大卒ではない場合は、どうでしょうか?
第二のチェックポイントは、日本の専門学校卒かということです。
専門学校においては、持っている専門士と、貴社での業務の関連性は、厳しく審査されることになります。
例えば、ビジネス専門学校を卒業した外国人を、マーケティング業務についてもらうのは可能です。
一方で、ホテル専門学校を卒業した外国人は、通訳・翻訳の業務をしてもらうことが出来ません。
大学の卒業資格がなくて、専門学校卒だけの場合は、持っている専門士がどのようなものなのか、チェックをしてください。
*本国での大卒と日本での専門学校卒の落とし穴
ここで、落とし穴についてコメントしておきましょう。
まずは、大卒に関してです。
入管法の大学というのは、基本的には、4年制大学や日本の3年生短大を卒業した「学士 or 短大学士」を表しています。
良く海外の大学では、大卒と言っても、その外国人が「学士(Bachelor)」を持っていることを確認してください。
時たまに、Bashelorを持っていない大卒者という人が存在しますが、その方は、大学と同等の教育を受けたとする証拠が必要となります。
成績表や卒論や指導教授によるお手紙などの、他の疎明資料をあつめなければなりません。
(ちなみに、法上は、「学士」を求められるものではありませんが、実務上は必要とされることが多いのです)
また、日本の専門学校卒というのにも、落とし穴があります。
これも入管法が定める専門学校卒というのは、「専門士」を持っているということです。
ゆえに、専門士を持たない専門学校卒の外国人は、普通の就労ビザを申請することは出来ません。
専門学校なのに、卒業しても専門士がもらえない学校は結構たくさんあります。
是非、その外国人の通っていた学校、学部で専門士が出るのかどうか、文科省のページ(こちら)で確認してください。
このような、3年制大学や専門士の無い専門学校の落とし穴には、注意してください。
外国人が本国で大卒で業務が緩く関連している、日本の大卒、日本の専門卒で業務が強く関連している場合は、ビザ(在留資格)が許可される可能性があります。
なので、この時点で雇用契約を結ぶか、内定を出し労働条件通知書を通知してください。
この契約書または労働条件通知書は、ビザ(在留資格)の申請の時の資料となります。
内定が出た時点で、次に外国人本人か、貴社の採用担当の方が入管へ行って、ビザ(在留資格)の変更申請をします。
(もちろん、専門家である取次行政書士・弁護士に依頼して頂ければ、幸いです)
このときの注意点は、変更中この外国人に働いてもらうことは出来ません。
変更が許可される前は、まだ「留学」のビザ(在留資格)を持っているので、働くことが出来ません。
もちろん資格外活動許可を持っていれば、週28時間のアルバイトのような形態で働いてもらうことは出来ますが、それ以上はダメです。
必ず、ビザ(在留資格)の変更が許可されてから、入社させて給与を発生させてください。
非常に多くのケースで、ビザ変更前に外国人が業務をしている場合がありますが、全て入管法違反です。
②在留資格「短期滞在」のとき
短期滞在とは、いわゆる観光ビザです。
ただ、このビザは商用にも用いることが出来ます。
ですから、短期滞在で日本に入国して就職活動をするようなケースもあります。
特にビザなしで日本に渡航することが出来る国々(欧米や韓国など)の方が多いかと思います。
彼らを雇用するときの注意点は、ほとんど①「留学」の時と同じです。
ちなみに、ホワイトカラーの職務につくことが出来る「技術・人文知識・国際業務」は、大卒でなくても業務経験が10年あれば、職歴証明書などを持っている場合においてビザ(在留資格)の変更をすることが出来ます。
留学生を雇用するときとの違いは、実務10年でもできるということです。
ちなみに、国際業務に該当する業務、例えば、語学の教師、海外営業、通訳・翻訳は、実務は3年で良いとされています。
ですから、もし、貴社での業務がこのような種類のものであるときは、実務3年分の職歴証明書でも大丈夫となります。
ただ、国際業務に該当する業務が具体的に何なのか?というイメージは非常に難しいので、専門家にご相談いただければと思います。
さて、短期滞在の方を採用するときの最大の注意は、ビザ(在留資格)の変更申請が出来ないということです。
「短期滞在」から他のビザ(在留資格)へ変更することが出来るのは、相当な理由がなければ変更できません。
それに該当するには、まず、在留資格認定証明書交付申請を行う必要があります。
よって、内定を出した時点で、契約書または労働条件通知書が出ますので、そこで認定申請をします。
認定申請は1~3か月ほどかかります。
もちろん、その間、短期滞在でその外国人は日本にいることが出来ますが、絶対に働いてはダメです。
内定を出しているからと言って、働いたら、そこで入管法違反となります。
そして、認定証が、もしその外国人が日本に在留している時点で交付されたなら、その認定証をもってビザ(在留資格)の変更申請をします。
この時点でも、まだビザ(在留資格)は短期滞在なのですから、働くことが出来ません。
変更の許可が降りて(約2~3週間)から、やっと働くことが出来るようになります。
もし、短期滞在の期限中に認定証が交付されないのであれば、本国へ一度戻ってもらう必要があります。
認定証が交付されて、本国へ送付し、本国にある日本大使館でビザを受けてから、日本へ再度入国する必要があります。
このように、「短期滞在」で在留している外国人を雇用するときは、注意点も多く、時間もかかることを留意ください。
3、外国人が日本にいない場合
このときは、まず雇用するところが大変です。
通常の場合、日本や本国の現地にある人材紹介会社の力を借りることになります。
最近では、Skypeなどのネットでの面接体制もかなり整っているので、本国まで出かけていくようなことは少ないと思います。
もちろん、悪徳ブローカーなどの案件もありますので、人材紹介会社の素性はきちんと確認する必要はあります。
海外にいても学歴や職歴要件は、全く同じです。
つまり、基本的には大卒か、業務経験10年(国際業務にあっては3年)が必要です。
ただし、注意してほしいのは、一度、日本に来たことがある外国人のケースです。
特に、技能実習生として日本に在留したことがある外国人は注意が必要です。
この場合は、前回に日本に来た時に入管へ提出されている履歴書と、今、貴社に提出されている履歴書が論理的につながっているかをチェックしてください。
技能実習生のケースでは、大学卒業の学歴がそっくりなくなっていたりするケースが多く見られます。
また、大学卒業学部が勝手に変わっていた、などのケースもあります。
何か、不審な点があった場合は、ビザ(在留資格)の審査が通りませんので、このチェックは重要です。
内定を出すようになれば、労働条件通知書を発行して、日本にある入管へ在留資格認定証明書交付申請をします。
1~3か月で認定証が交付されて、それを本国にいる本人に送付し、本国の日本大使館でビザを取得し、日本へ入国することになります。
4、雇用後の話
しつこく言うようですが、ビザ(在留資格)の許可を受けた業種以外の職種には就かせることが出来ません。
ホワイトカラーの業務間で配置転換が行われるならば大丈夫ですが、もし、ブルーカラーの業務へ転換する場合は注意が必要です。
また、ハローワークへの外国人の雇用届出も、必ずしてください。
これも違反すると30万以下の罰金刑となります。
そして、日本で働いている外国人は非常に弱い存在です。
ですから、雇用主として、外国人のサポートをしていただければ、幸いです。
特に精神的なサポートが必要ですから、声をかけてあげるなどの簡単なことでいいので、ぜひ実践してください。
長く、貴社を支える重要な人材として育てば、貴社にとっても非常に有用です。
以上、長くなりましたが、外国人を雇用するときに注意すること、そのプロセス、そして、やるべきことでした。
外国人を雇用するのは、中々覚悟が要りますが、未曽有の人材不足の時代を生き抜くためにも、チャレンジしてはいかがでしょうか?
私も専門家としてサポートすることが出来ますので、お気軽にご相談ください。