こんにちは、新宿は高田馬場の入管業務専門の行政書士の辻です。
3月に入管法施行規則が改正となり、3月16日からオンライン申請が改正されます。
この記事は1日前に書いてあるので、まだトラブルなしに動き始めるかは、神のみが知っている出来事ですが、
改正された施行規則の内容から推測するに、この改正は在留資格諸申請に革命をもたらすものです。
以下、利点と懸念、また、他の改正点について触れたいと思います。
なお、公式の発表内容は以下の通りなんですが、漢字が消えてたりと、急いで作った感が満載です。
https://www.moj.go.jp/isa/content/001368775.pdf
1、改正点に関しての詳細
A.ほぼすべての在留資格でオンライン申請が出来る
今までは入管法別表第一に記載されている、いわゆる就労系と呼ばれる在留資格じゃなければ、オンライン申請は出来ませんでした。
しかし、改正後は、外交と短期滞在の在留資格以外の全ての在留資格でオンライン申請が出来るようになりました。
B.誰もがオンライン申請を扱える
今までは、所属機関のみがオンライン申請を扱うことが出来ました。
これもかなりめんどくさく、オンライン申請の登録をして、オンライン申請をしようとしている外国籍の方の名簿などを提出して、IDとパスワードを発行してもらわなければいけませんでした。
改正後は、所属機関のみならず、外国籍の方個人に、このIDとパスワードを発行することが出来るようになりました。
ただし、個人の方はマイナンバーカードによって、個人認証をする必要がありますので、マイナンバーカードを持っていなければなりません。
さらに、外国籍の方本人だけではなく、例えば小さなお子様の親であったり、病気などで自分から申請できない場合の親族もオンライン申請が出来るようになりました。
また、在留資格認定証交付申請の場合は、例えば本人の日本人の配偶者が、自身のマイナンバーカードを使って、配偶者のための申請がオンラインで出来るようになります。
そして、改正後は私たち取次者と呼ばれる、依頼人の代わりに在留資格の書類を入管へ持っていって、取次申請をしていたものにも、個々にIDとパスワードが発行されます。
これにより、依頼人が取次者に依頼し、取次者が個人的にオンライン申請を取次申請をするということが可能になりました。
C.永住申請を除くほぼすべての申請が扱える
これは改正前と変化はありませんが、在留資格認定証交付申請(新規呼び出しのとき)、在留期間更新申請、在留資格変更申請、就労資格証明交付申請、在留資格取得申請(主に、子供が生まれたとき)がオンライン申請の対象です。
さらに、変更や更新申請などの申請と同時に行う再入国許可申請(1年を超える出国のとき)、資格外活動許可申請も対象です。
*単独で再入国許可申請、資格外活動許可申請は出来ません。
なお、永住者になるための永住許可申請や、永住者が7年に1度行う在留カード更新申請などはオンライン申請からは対象外となっています。
D.(他改正点で重要なものとして)手数料納付書の署名が記名になります
今までは更新や変更をして在留カードを新しく発行するときに4,000円の収入印紙を貼る手数料納付書は申請人(申請代理人)の署名が必要でしたが、
改正後は、記名で良いことになります。
つまり、パソコン等で名前を打って、プリントアウトすれば、自分で名前を書く必要はありません。
以上、非常に期待の出来るオンライン申請への変更ですが、懸念点もあります。
2、懸念点に関して
A.本当に外国籍の方がオンライン申請をするか?
日本のオンライン申請システムは非常に分かりにくいです。
それは、税務署へ行わなければならない確定申告のオンライン申請を見れば明らかなとおりです。
入管のオンライン申請システムが例外だとは言えず、おそらく分かりにくいもののはずです(もちろん、偏見かもしれませんが)。
基本的な取り扱い言語は日本語であって、英語の翻訳がくっついているとは言え、日本語が相当なレベルではない方がオンライン申請をするのはハードルが高いと言わざるを得ません。
さらに、マイナンバーカードの発行手続きも日本語を母語としない方には、やはりハードルが高いものであり、マイナンバーカードを前提とするオンライン申請は全く外国籍の方々には広がっていかないかもしれません。
そもそも、このオンライン申請は、入管の庁内の混雑を防止するのが主目的であるわけで、現状、ほとんどの申請は外国籍の方本人が申請するものでありますから、皆がオンライン申請を使わなければ、入管の混雑はそのままです。
B.追加書類に関して
オンライン申請でも添付資料は一括でPDFにして添付することが可能です。
ここで、原本が必要だと思われるもの、または、事実の確認が必要だと思われるものは、後日、追加資料の請求が郵送で来て、書類を郵送するか持参することになります。
第一に、なにより、オンライン申請をしているのに、郵送を使って書類の原本を送るというのは完全にナンセンスです。
もちろん、外国で発行された書類にアポスティーユ認証がくっついているようなものであれば、まだ原本確認は分かります。
しかし、例えば、日本で発行される戸籍謄本などは、コピーさえPDFにて添付すれば、それが事実かどうかは審査官が職権で各役所に確認をすることが出来るはずです。
戸籍謄本のコピーの偽造を疑うために、原本を提出するよりもはるかに効率的だと考えられます。
第二に、日本の郵便システムは非常に優秀なシステムですから、郵便が相手方に届かないということは、殆どあり得ません。
しかし、無いとも言い切れません。
特定記録やレターパックなどの配達の記録が残るもので送付したと言って、審査官の手元まで届いたかどうかの保証がありません。
(現状においても、これが保障されないので、とても困っています)
せっかくオンラインでやるのですから、オンラインの画面上で、追加資料請求中、追加資料到着済みなどのステータスが分かるようにするべきだと思います。
第三に、特に外国籍の方の本人申請の時に、全く添付資料を付けずに申請されるケースが入管庁内では散見されます。
窓口では、必須資料がない場合の申請は断ることが出来ます。
しかし、オンラインでは(おそらく)申請が出来てしまいます。
これをオンライン申請でやってしまうと、せっかくオンラインで添付資料をPDFで添付できるのにもそれをせずに、
後で追加資料を請求されてしまい、郵便に負担をかけ、審査官にも負担をかけ、ご自分にも負担がかかる、さらにこの時間、他の審査が進まない可能性まであるという、何重もの手間をかけてしまう可能性があります。
よって、特定の在留資格には特定の必須書類があることを明記し、そのPDFファイルの添付が無いのであれば、申請を受理しないようなシステムとすべきだと思います。
(たとえば、日本人の配偶者なら、戸籍謄本は必須であると明記し、PDFファイルの中にそのコピーが無いことをAIで検出して、エラーを出すというようなことは、やれば出来るはずです)
C.ブローカーに関して
本人がオンライン申請を出来るようになるということは、本人確認は本人のマイナンバーカードのみで行われるようになります。
このシステムでは、悪質なブローカーが、外国籍の方のマイナンバーカードを使って、虚偽申請をするということが出来るようになります。
今までは、ブローカーが付いていても、本人が入管庁へ行かなければならなかったわけですが、こんどは家で不正申請が出来るということです。
これに関して、どのように対策をするのか、入管は明らかにしていませんが、現状のオンライン申請の仕方は、何でもありです。
オンライン申請の場合は、窓口申請よりも厳しく審査をするなどの、平等原則に反することは基本的には出来ないでしょうから、ブローカーが暗躍する可能性はあります。
もしかすると、様々な事実関係の確認に時間がかかり、オンライン申請の場合は、窓口申請に比べると、更に多くの時間が審査に対して割かれてしまう要因となり得ます。
もちろん、オンライン申請しているパソコンのIPは通常は調べれば分かりますし、問題が起こった後で、誰が申請したかを追跡するのは容易だとは思います。
ただ、問題が起こってから対処していたのでは、入管法の目指す適正な在留管理は到底できないことは明らかでしょう。
よって、オンラインでもビデオ通話で認証を行うなどの何らかの対策が、ここには必要だと考えられます。
(受理側がAIだとしても、在留カードの顔写真と、PCの前にいる人が同一人物かどうか位は見分けられるし、そのくらいはする必要があるでしょう)
なお、私たち取次者も時たまに営利目的在留資格不正取得罪などで逮捕されていますが、オンライン申請を使えば、虚偽申請のハードルは下がってくるので、悪質なものに使われない、騙されないように注意すべきです。
以上、利点と懸念点でした。
新しいシステムの導入時は混乱があるものですし、申請側も受理側も、慣れるまでは時間が必要です。
郵送コストの増大、郵送時の事故の保障、虚偽申請に対する対策も、積極的に議論されていくことを願っています。
なにより、全ての懸念は杞憂に終われば、一番良いです。
革命的と言っていい、このオンライン申請システムの変更がより良い形で運用され続けていくことを切に願うばかりです。
(何より、サーバーエラー等のトラブルが最小限に抑えられるように祈っています)