この問いは非常に重要な問題だと思います。
調べてみると、入管への申請代理における報酬は、行政書士も弁護士もあまり変わりません。
ということは、法律の専門家である弁護士の方に頼むのが良いのでしょうか?
ではまず、行政書士と弁護士のできることの違いを見て見ましょう。
1、行政書士と弁護士は、取次申請者としては同じ立場
入管法は、入管への申請は本人が行くこと(本人出頭)を原則としています。
ですから、代理人は入管法で決まっている代理人以外は、認められていません。
「入管取次申請者」というのは、代理申請しているわけではないのです。
この意味では、学問上の「使者」に過ぎません。
ですから、もし、申請書類に間違いを発見したら、弁護士や行政書士が代理して修正することができず、
必ず本人か法定代理人が修正し、修正印を押すことになっています。
「申請する」という一点において、行政書士も弁護士も使者として、取り次いでいるだけです。
ここに差はありません。
弁護士法の言う、依頼人に対して当然に代理権、代弁権が与えられているのですが、申請の時にそれは使えないのです。
(結構、弁護士で入管業務されている方の記事で、弁護士にしか代理権が無いという書き方が多いのですが、弁護士にも「申請の代理権」はありません。)
ちなみに、申請書類を作る段階においては、弁護士は弁護士法における代理権を用いて作成することができます。
そして、行政書士も、行政書士法における官役所に対する書類を作成することが業務として認められていることから、申請書類の作成が可能です。
つまり、通常の申請案件では、弁護士と行政書士の差はゼロです。
この辺りの事情から、弁護士と行政書士との申請代理に関する報酬が同じであるのは、リーズナブルであると考えられます。
2、行政書士と弁護士の決定的差は、収容される等の案件あたりから
もし、オーバーステイなどで収容されてしまうと、強制退去の手続きへ変わります。
その時に外国人に対して質問をする機会が与えられます。
ここで弁護士は、その外国人の代理人として、当然に自分の意見を言うことができます。
弁護士にしか与えられない代弁権が生きてくるのです。
一方で、行政書士も行政書士法によれば、行政手続法に基づく聴聞においては代理権が付与されています。
しかし、入管法は、この行政手続法を適用していませんから、当然に聴聞代理が認められるわけではありません。
その趣旨は及ぶとして、友人的な立場で、外国人の質問の場にいることは出来るようですが、
弁護士のように自由に発言できるような立場ではありません。
もちろん、行政書士も在留特別許可の申請を仕事としてすることができます。
しかし、弁護士に比べると、収容されてしまったような案件に関しては非常に弱いと考えられます。
もし、収容された外国人を何とかしたいとお考えであるならば、弁護士に直接相談されることをお勧めします。
3、弁護士しか訴訟はできませんが…
もう一つの違い、これが決定的ですが、弁護士は裁判における代理人になることができます。
行政書士は、逆立ちしても、裁判の弁護はできないということです。
ただ、入管業務において訴訟で勝訴を勝ち取る方法と、申請において許可を勝ち取る方法と、どちらが簡単かというと、これは明らかです。
どう考えても、訴訟で国に勝つよりは、申請の時に、国から許可を勝ち取る方が、はるかに簡単です。
時間も手間もかかりませんし、申請許可率(永住を抜けば、9割を超えます)の方がはるかに高いのです。
4、結論
一般的にいうと、弁護士は、行政書士よりできることが多いです。
それは、当たり前です。
弁護士とは、司法試験や司法修習という高度な法的訓練を受けてなるのですから、その努力や能力は尊敬に値しますし、実際、優秀な方たちばかりです。
しかし、入管業務において、特に通常の申請業務においては、前述した通り弁護士と行政書士の差は、ありません。
収容された後とか、難民申請とか、何としても訴訟を考えている等の案件でない限り、その差は現れないでしょう。
そして、できることの範囲が広い弁護士の先生の中で、入管業務を専門でやっている方は、あまり見かけません。
(もちろん、難民申請のサポートをされている弁護士グループなど、特殊なものもあります。)
その意味で、行政書士には、入管申請だけを業務として、入管に関する専門知識を備えることができるのです。
法律の専門家である弁護士よりも入管法に精通し、入管法に関する判例を勉強し、入管の内部事情に詳しくなれる可能性が行政書士にはあります。
入管分野に関しては、入管法に詳しい弁護士より、入管法に詳しい行政書士に出会う確率の方が高いと思います。
たしかに、入管法を勉強もせず、判例も追わず入管業務をこなしている行政書士が、残念ながら存在することは事実です。
いないことを切に祈りますが、悪徳なブローカーと手を組んで、グレーな申請をしている行政書士も沢山いるでしょう。
要は、弁護士であっても、行政書士であっても、申請に関してできることは一緒なのですから、
その人がどれだけ入管法に詳しいのか、どれだけ親身になって聞いてくれるのか、どれだけ戦略的に許可を勝ち取ろうと考えてくれるのかなど、
肩書では語ることができないものを、ご自分の耳と目で見極める必要があると思います。
ぶっちゃけ、どっちでもいいじゃん。許可がもらえるなら。ということです(笑)